1977年、マルゴーはアンドレとローラ・メンツェロプロスに売却され、直ちにブドウ畑やワインの醸造設備に惜しみない大金が注がれた。
エミール・ペイノーがワイン醸造のコンサルタントとして迎えられた。こうした経済的、精神的な投入がマルゴーのワインに反映されるようになるのは数年先のことになるかもしれないと思われたが、マルゴーの底なしの偉大さを世界に見せつけるには、1978年のヴィンテージひとつで十分だった。
不幸にもアンドレ・メンツェロプロスは、苦心して育てた第一級シャトーが驚くべき優雅さと豊かさと複雑さを備えた、輝かしくも一貫したワインに大きく変貌するのを見届ける前にこの世を去った。現在は夫人のローラと都会的なやり手の娘、コリンヌがここを取り仕切っている。この二人は少なからぬ才能の持ち主たちに取り巻かれているが、なかでもポール・ポンタイエの存在は光っている。
1978年もののマルゴーはすぐに評判を勝ち取り、その後もきら星のごときワインを次々に送り出した。そのすごさ、豊かさ、バランスは、1980年代、マルゴー以外のボルドーでつくられるどのワインよりもすばらしいと言っても過言ではなかった。
よみがえったマルゴーの特徴は、贅沢な豊かさや深みのある、多面的なブーケを持つスタイルで、熟したブラックカラント、スパイシーなヴァニリン・オーク、スミレのような華やかな香りがある。今ではその色や豊かさ、ボディ、タンニンにしても、1977年以前にジネステの支配下でつくられていたワインよりかなり充実している。
講談社刊 ロバート・M・パーカー Jr.著 ボルドー第3版より引用