ディケムの偉大さとユニークさには、いくつかの要因がある事は間違いない。
まず第一に、独自の微気候を伴う完璧な立地条件があること。
第二に、リュル・サリュース家は、97キロメートルにも及ぶパイプを用いた精巧な排水システムを設置したこと。
第三に、ディケムには、経済的な損失やトラブルを斟酌せずに、最も良質なワインだけを生産しようという狂信的とも言える執念が存在する事だ。
ワインは新樽の中で3年以上かけて熟成され、全収穫量の20%が蒸発により失われる。
リュル・サリュース伯爵が瓶詰めできるとみなしたワインでも、最良の樽からでけ厳しく選別される。
私の知る限り、これほど無情な選別過程を採り入れているシャトーは他にない。
ディケムでは、芳醇さが少しでも失われる事を恐れて、決して濾過処理を行わない。
美術出版刊 ロバート・M・パーカー Jr.著 ボルドー第4版より引用