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■ シャトー・ディケム Ch.D'Yquem

ディケムの偉大さとユニークさには、いくつかの要因がある事は間違いない。
まず第一に、独自の微気候を伴う完璧な立地条件があること。
第二に、リュル・サリュース家は、97キロメートルにも及ぶパイプを用いた精巧な排水システムを設置したこと。
第三に、ディケムには、経済的な損失やトラブルを斟酌せずに、最も良質なワインだけを生産しようという狂信的とも言える執念が存在する事だ。
ワインは新樽の中で3年以上かけて熟成され、全収穫量の20%が蒸発により失われる。
リュル・サリュース伯爵が瓶詰めできるとみなしたワインでも、最良の樽からでけ厳しく選別される。
私の知る限り、これほど無情な選別過程を採り入れているシャトーは他にない。
ディケムでは、芳醇さが少しでも失われる事を恐れて、決して濾過処理を行わない。

美術出版刊 ロバート・M・パーカー Jr.著 ボルドー第4版より引用

シャトー・ディケム Ch.D'YQUEM 1811

シャトー・ディケム Ch.D'YQUEM 1895

シャトー・ディケム Ch.D'YQUEM 1893

■ シャトー・マルゴー Ch.Margaux

1977年、マルゴーはアンドレとローラ・メンツェロプロスに売却され、直ちにブドウ畑やワインの醸造設備に惜しみない大金が注がれた。

エミール・ペイノーがワイン醸造のコンサルタントとして迎えられた。こうした経済的、精神的な投入がマルゴーのワインに反映されるようになるのは数年先のことになるかもしれないと思われたが、マルゴーの底なしの偉大さを世界に見せつけるには、1978年のヴィンテージひとつで十分だった。

 不幸にもアンドレ・メンツェロプロスは、苦心して育てた第一級シャトーが驚くべき優雅さと豊かさと複雑さを備えた、輝かしくも一貫したワインに大きく変貌するのを見届ける前にこの世を去った。現在は夫人のローラと都会的なやり手の娘、コリンヌがここを取り仕切っている。この二人は少なからぬ才能の持ち主たちに取り巻かれているが、なかでもポール・ポンタイエの存在は光っている。

1978年もののマルゴーはすぐに評判を勝ち取り、その後もきら星のごときワインを次々に送り出した。そのすごさ、豊かさ、バランスは、1980年代、マルゴー以外のボルドーでつくられるどのワインよりもすばらしいと言っても過言ではなかった。

 よみがえったマルゴーの特徴は、贅沢な豊かさや深みのある、多面的なブーケを持つスタイルで、熟したブラックカラント、スパイシーなヴァニリン・オーク、スミレのような華やかな香りがある。今ではその色や豊かさ、ボディ、タンニンにしても、1977年以前にジネステの支配下でつくられていたワインよりかなり充実している。

講談社刊 ロバート・M・パーカー Jr.著 ボルドー第3版より引用


シャトー・マルゴー Ch.Margaux 1900 1500ml

シャトー・マルゴー Ch.Margaux 1893

シャトー・マルゴー Ch.Margaux 1900

■ シャトー・ラフィット・ロートシルト Ch.Lafite Rothschild

しかし、1975年以降、熱心なエリック・ドゥ・ロ-トシルトによって、ラフィットの経営陣は勤勉な運営に励むようになった。そして、過去には最低32ヶ月から36ヶ月の熟成期間をとることが多かったのだが、現在は長くても24ヶ月から30ヶ月に短縮されている。こうした変更が確実にラフィツトの果実味も増し、いっそうの新鮮さをもたらした。ブドウの収穫を意識的に遅らせ、より熟した、酸度の低いワインを目指している。

ラフィット・ロートシルトは今や偉大なるワインを生み出している。品質向上の証は、あのすばらしい1975年ものにおいて明らかに現れた。1981年より以降 1981年、1982年、1983年、1986年、1987年、1988年、1990年、1995年、1996年などラフィット=ロートシルトは、メドックでの最高の部類のワインを産してきたのである。

講談社刊 ロバート・M・パーカー Jr.著 ボルドー第3版より引用


シャトー・ラフィット・ロートシルト Ch.Lafite Rothschild 1870

シャトー・ラフィット・ロートシルト Ch.Lafite Rothschild 1893

■ シャトー・ムートン・ロートシルト Ch.Mouton Rothschild

ムートン=ロートシルトは故フィリップ・ロートシルト男爵が独自につくり上げた場所であり、ワインである。21歳でこのシャトーを得たとき、彼が並々ならぬ野心を抱いたのは疑いないことだ。しかし、豊かで著しく深みのあるエキゾチックなスタイルのポイヤックの生産によって、彼は1855年のメドックのワインの格付けを変えさせた、たった一人になったのである。男爵は1988年1月に死去。今はその娘フィリピンヌがこのワインづくりの帝国の精神的頂点にいる。彼女は常に、パトリック・レオン率いる有能なムートン・チームの頼もしい協力を得てきた。

 1973年、ムートン=ロートシルトは公式に「一級シャトー」と格付けされる。こうして、異才の男爵は、彼の挑戦的ワインのラベルの言葉を、「一級にはなれないが、二級の名には甘んじられぬ、余はムートンなり」から、「余は一級であり、かつては二級であった、ムートンは不変なり」と変えたわけである。

 疑問の余地なく、私が飲んだボルドーの最もすばらしい瓶のいくつかはムートンだ。1929年、1945年、1947年、1953年、1955年、1959年、1982年、1986年、1995年はムートンでも最良の、ほれぼれするようなワインである。

講談社刊 ロバート・M・パーカー Jr.著 ボルドー第3版より引用


シャトー・ムートン・ロートシルト Ch.Mouton Rothschild 1866

シャトー・ムートン・ロートシルト Ch.Mouton Rothschild 1873

シャトー・ムートン・ロートシルト Ch.Mouton Rothschild 1875

■ シャトー・オーゾンヌ Ch.Ausone

1990年代半ばに、ヴォティエ一族はデュボア・シャロン夫人から持ち株を買い取った。 醸造責任者であるパスカル・デルベックにとって代わったのはアラン・ヴォティエで、彼はリブルヌのミシェル・ロランから、醸造についてのアドバイスを得ている。デュボア・シャロンとデルベックのワインづくりを支持する人々は、オーゾンヌのワインづくりが、より外向的で商業主義的なスタイルだと文句を唱えるが、これは利己的な思惑を持つ人々の愚痴でしかない。

ヴォティエとロランの管理下での唯一の変化は、天候状況が許せば、収穫を少し遅くすることと、マロラクティック発酵をタンクではなく樽の中で行うといったことである。新しい体制下でつくられた最初の2つのワイン(1995年と1996年)は傑出しており、オーゾンヌのエレガントさ、繊細さ、ミネラルをベースとした驚くべき特徴などすべてを備え、より凝縮して、強力であった。事実、樽と瓶での1995年のオーゾンヌの育成ぶりは輝かしいもので、しかもこのワインは、デュボア・シャロン/デルベック陣営の論議の的となった、「典型的な特色」を何ひとつ失ってはいないのだ。私は、オーゾンヌが、熱心なアラン・ヴォティエの指導のもとで、より一貫性を備え、より高い質へ達するものと予測している。

講談社刊 ロバート・M・パーカー Jr.著 ボルドー第3版より引用


シャトー・オーゾンヌ Ch.Ausone 1849

シャトー・オーゾンヌ Ch.Ausone 1877

シャトー・オーゾンヌ Ch.Ausone 1847

■ シャトー・シュヴァル ブラン Ch.Cheval Blanc

シュヴァル・ブランは間違いなく、ボルドーで最も深遠なワインである。
今世紀のほとんどにおいて、サン=テミリオンの格付けの中で単独でトップの地位を占め、このアペラシオン最高のワインを生み出してきた。

ボルドーの「8大ワイン」のひとつであるシュヴァル・ブランは、おそらく、飲み頃の幅が最も広いワインであろう。
通常、このワインは最初に瓶詰めされた時点でおいしいのだが、最高に出来のよい年のワインの場合、長期にわたって質を保つことのできる能力を備えている。

メドックの第一級シャトーのワインも、ポムロルのペトリュスも、これほどの柔軟性を備えてはいない。
シュヴァル・ブランの絶大なる人気に貢献しているのは、このシャトーで生み出されるワインのスタイルにあると言える。

暗いルビー色で、優良なヴィンテージならば、ふくよかで豊かで、果実味に富んだワインとなる。
フルボディで、官能的で、みずみずしく、また人を惑わすほどに若い時点で飲みやすい。
そのブーケはとりわけ特徴的である。
最高のシュヴァル・ブランは、マルゴーなどのメドックの第一級シャトーのワインよりも香りが華やかだ。
シュヴァル・ブランはオー=ブリオンとともに、ボルドーの「8大ワイン」の中では最も価格の低いワインである。

講談社刊 ロバート・M・パーカー Jr.著 ボルドー第3版より引用


シャトー・シュヴァル ブラン Ch.Cheval Blanc 1924 1500ml

■ シャトー・グリュオ・ラローズ Ch.Gruaud-Larose

何十年もの間、グリュオ=ラローズはサン=ジュリアンとしては最も巨大で、内向的なワインを生産してきた。
新しい所有者であるジャック・メルローのもとでは、明らかに、より洗練され、素朴さやタンニンを減らしたスタイルのグリュオをつくり出す傾向にあるが、この近年のワインづくりの方向性は今後も続くだろうと予想している。

生産量は多く、品質は一貫して高い。
1979年、1982年、1983年、1985年、1986年、1990年は最上の品質を持つヴィンテージである。

この美しいシャトーはサン=ジュリアンの台地の上に位置し、メドックを訪れる人は、サン=ジュリアン=ベイシュヴェルで、幹線であるワイン街道(県道2号線)から県道101号線に入り、それを西へ進まないと見ることができないだろう。
グリュオ=ラローズに対して、がっしりとして巨大すぎるという印象を抱いていた批評家も、ここをまた訪れてみるとよい。
このワインは、より繊細でエレガントな味わいとなってきているからである。


シャトー・グリュオ・ラローズ Ch.Gruaud-Larose 1865

シャトー・グリュオ・ラローズ Ch.Gruaud-Larose 1926

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